読書感想 実力も運のうち 能力主義は正義か?(マイケル・サンデル)
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ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が能力主義をアメリカの政治や宗教、歴史の観点から研究した本です。
アメリカで蔓延している冷酷な能力主義を批判し、寛容な公共生活の実現を目指す内容となっています。
能力主義(メリトクラシー)とは
能力主義とは、ウィキペディアを見るとこうあります。
個々人の能力の査定結果を人物評価の基準とし、待遇として反映する主義。特に企業の人事考課に利用され、この評価を地位の上下や賃金額に反映する。
本著によると能力主義とは
自分の成功は自分の努力や能力の結果で自らの多大な努力によってもたらされたという考えです。
もちろん成功者は多大な努力をしていることは認めます。
しかし全ての成功できなかった者に落ち度があったのでしょうか。
成功と努力の相関関係
それぞれの家庭環境には差があります。
また市場は対価の尺度にすぎず、才能や努力は関係ありません。
市場の対価(お金)を努力と結び付けて考えるのは危険です。
対価は道徳的な手柄を反映しているわけではなく
たまたまその能力(起業やスポーツ、投資、芸能等)が、今の市場で対価を得ることができる才能だっただけなのです。
対価と本人の努力とは無関係です。
平等な機会の実現
すべての人間が平等な機会を得ることができるでしょうか。
それは不可能ですし、成功はほぼ運によって決まります。
封建主義的な中世貴族社会での成功なら、成功者にその地位が運により受け継いだものだという意識があります。
成功者はその意識を前提に行動することになります。
しかし能力主義社会は、生まれもった地位が才能や努力にいれかわります。そこへクローズアップすることにより驕りを生みます。
そして、低収入の人間へ怠け者の烙印を押し自尊心を傷つけます。
それは格差を大きくして治安悪化へとつながります。
能力主義の問題点と本書での解決提案
受験戦争で子どもが精神疾患をかかえやすくなっています。
受験はある程度ふるいにかけて、あとはくじ引きで決めるのはどうでしょう。
そうすれば出身校はある程度運によることが周知され、学歴差別は減ると思います。
労働者への重課税が格差を拡大しています。金融資産への課税のほうが比較的安いです。
投資家は経済成長へ貢献して、雇用者を作っているから労働課税より安くていいのでしょうか?
いいえ。それが不平等を深刻化して労働者の障害になっています。
労働が社会への共通善への貢献と感じることが難しくなってしまい、社会的連帯を蝕み民主主義を破壊します。
給与への課税は撤廃して、実体経済に貢献しない金融取引や資産に対して課税をするべきです。
感想
私も10代20代の時は頑張って成功することが正義だと考えているときがありました。
でも学生時代はバレーボールを頑張りましたが、全然うまくなりませんでしたし…
仮にバレーボールがすごくうまくなったとしても、他のメジャーなスポーツに比べると収入は低いはずです。
ただ、金銭的な対価は競技の魅力や価値とは全く関係がありません。
たまたま今の世界で、いろんな人が見るから結果的に収入が多くなるというだけです。
収入が多い職業は、たまたま多くの人からお金が集まるポジションにいるということで
小学生が考える、「日本国民全員から1円もらったら1億2000万円もらえるぜ!」
というのと同様の理論だと思います。
仕事は独立して3年目です。
吹けば飛ぶような(吹かなくても飛ぶような)零細事業者ですが、なんとかうまくやっています。
すごいねと言われることがありますが
それは私がすごいからとか努力しているからではなく、本当にたまたまなのです。
新卒で入った会社で技術的なことを教えてもらい
次の会社で、営業的なことを教わりました。
それで、たまたま一人で一通りの仕事ができるようになりました。
あと人を動かすことより、一人で動くほうが向いていたのもあるかもしれません。
頑張ったほうが収入が増えるのであれば、学生時代や新卒の時は
年収3000万円くらいほしかったです。
今の日本でも成功者が勝ちで全てのような風潮を感じます。
そういった風潮にわずかながら抵抗をしていきたいと思います。
ではまた!